2024年7月1日、国土交通省は放置空き家の市場流通を後押しするため、不動産業者が受け取る仲介手数料の上限額を18万円から30万円へ引き上げました。売却額400万円以下の空き家に適用する特例制度の対象を同800万円以下に広げました。この事により、売却しようと思われている方や購入検討者の負担は増える事となります。
■低廉な空き家等(800万円以下)の仲介手数料が30万円に変わりました!
2024年6月30日までの制度は400万円以下で状態が悪い物件を「低廉な空き家」と定義し、特例で仲介手数料を最大18万円と宅地建物取引業法が定める一般的な空き物件の上限よりも高く設定していましたが、そのような状態であっても、地方エリアの不動産事業者の廃業も増えていることを鑑み、このような改正に至ったようです。
たとえば200万円の物件の場合、2024年6月30日までの法律では仲介手数料は最大10万円、特例を適用すると上限額は18万円でしたが、今回の改正法により30万円に上がります。この価格は「税別」となりますので、プラス消費税を加算した金額を請求することになります。
戸建てか共同住宅かにかかわらず適用され、2024年6月30日までの制度では特例手数料の請求を売り主に限っていたが、買い主にも請求できるようになりました。
また、低廉な空き家等の売買や交換における代理報酬計算が仲介手数料の2倍となります。低廉な売主依頼による現地調査費用が発生した場合は上乗せして請求できるようです。
■低廉な空き家等に対する賃貸案件も手数料が変更されています!
空き家を賃貸物件として仲介した場合の手数料も見直され、一般的な空き室の場合、受け取れるのは貸主と借り主の合計で賃料の最大1カ月分となっていましたが、長期にわたって使われていなかったような空き家は特例で貸主から1カ月分、追加で取れるようになりました。こちらの価格も「税別」となりますので、プラス消費税を加算した金額を請求することになります。
■増え続ける低廉な空き家等について
全国の空き家の数は住宅全体の13.8%にあたる900万戸となり、人口減少や高齢化などを背景に過去最多となったことが総務省の調査でわかりました。総務省は、住宅の数や状況などを調べるため、5年に一度「住宅・土地統計調査」を行っていて、2023年10月1日現在の調査結果を公表しました。それによりますと、日常的に人が住んでいない空き家の数は全国で900万戸にのぼり、前回の調査から51万戸増え、過去最多となっています。
空き家の数は、人口減少や高齢化などを背景に各地で増え続け、30年前の1993年のおよそ2倍となり、住宅全体に占める割合も13.8%と、これまでで最も高くなりました。使用目的のない空き家の割合が増加しており、単身高齢者などが亡くなったあと、相続人がいなかったり、遠方に住んでいたりして活用されない住宅が増えているのが実態のようです。
放置された空き家をめぐっては倒壊のリスクのほか、治安や景観の悪化につながることもあるとして対策が課題になっています。
■マンションの空き家も増えている・・・
住民が年を重ねるとともにマンションの老いも目立ってきています。全国で40年超のマンションはおよそ20年後には3.5倍の445万戸に増える見通しです。人生100年時代になっても適切に建物を管理しなければ住めなくなります。
非常に残念ではありますが、政府は高度経済成長期に、住宅を郊外に大量供給して急増する住宅需要に応えました。ダイニングキッチンなど先進的な設備を備えた「団地」に住むことは、子育て世帯の憧れとなっていましたが、今は住宅環境も大きく変わりました。人口減少で都市機能の集約が進み、住環境や公共交通が整う都市部のマンション人気に火が付きました。時代の変化に置いていかれた住宅政策のツケがここにきて管理不全マンションとして顕在化しています。
政府は空きマンションの増加にも焦りを募らせており、家屋撤去の最終手段となる行政代執行は、全戸空室である事が条件で戸数の多いマンションは適しません。高齢化によって親から子へ相続される古い物件は増えていきます。適切な管理を怠れば廃墟化したマンションも増殖し、まちづくりに支障をきたしかねません。
その為、今回の低廉な空き家等への改正が、空き家等の利活用につながってくれれば幸いです。
今後の参考にお役立て下さい。
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