マンションの相続税の負担が増えそうです。2024年1月にマンションの相続税評価額の算出ルールが改定、評価額が上がるケースが増えています。従来は評価額が時価を大幅に下回ることが多く、マンションは節税策として注目されてきました。新たなルールで時価との差額が是正され、マンション価格が高い都心部を中心に幅広い物件に影響が及ぶ可能性が出てきています。
■マンションの節税対策、これからは納税額も事前に把握する時代?!
2024年1月にマンションの相続税評価額の算出ルールが改定され、このままでは現金で納税額を賄えないという世帯が増えています。昨年まで相続財産の見込み額が約3億円だったという80代の男性の場合、男性は約3000万円の納税額を想定し、財産を引き継ぐ家族が現金で払う用意があったそうです。しかし、2024年1月からの新たなルールに基づいて保有マンションの評価額を出したところ、財産全体の評価額が4億円近くに膨らみ、相続税額は約7000万円に増える見込みとの事です。
マンションの評価額は、路線価に敷地全体の面積と敷地利用権の割合を掛け、家屋の固定資産税評価額と合計して算出されます。戸数が多いマンションは、一戸あたりの土地の持ち分が狭く評価額が下がりやすいのですが、市場の価格は建物の階数や築年数がより反映され、高層階の物件などは高くなりやすいといった特徴がありました。国税庁の調査では、マンションの相続税評価額は平均で時価の4割程度だったようです。戸建て住宅をお持ちの方は路線価で算出すると時価の8割程度となる場合が多いため、それと比較してもかなりの低さとなります。
新ルールでは、最低でも評価額を市場価格の6割程度に引き上げる事が想定されています。具体的には、築年数や階数などに様々な係数をかけ、相続税評価額と理論的な市場価格の「乖離(かいり)率」を計算します。その結果、評価額が市場価格の60~100%なら、従来の評価額とします。60%未満(乖離率は1.67倍超)なら、乖離率に0.6をかけた数値を従来の評価額にかけることで、評価額が市場価格の60%になるように補正されます。
■マンションの節税対策、新ルールでどの程度評価額が上がるのか?!
東京都内の築6年・38階建てマンション19階の物件で計算してみようと思います。従来の評価額は土地と建物の合計で約4150万円。新ルールでは約8350万円と2倍になったようです。
新ルールの評価額を左右するのは乖離率の計算式となります。「築年数」にはマイナスの係数をかけ、数字が大きいと乖離率が下がり、評価が下がります。マンション全体の「総階数指数」や「所在階」にはプラスの係数をかけ、高い階数なら評価が上がる仕組みとなります。「敷地持ち分狭小度」の計算部分は、敷地の持ち分が狭い点を補正し、立地条件を評価額に反映させる狙いがあります。新しく、高層で、立地条件が良い物件ほど、評価額は高くなります。
高層物件は新ルールの評価額が高くなりやすく、築浅の物件が多いことに加え、敷地持ち分狭小度の値が小さくなるためです。狭小度は、敷地利用権の面積を専有部分の床面積で割って算出されます。登記簿などに記載された情報を基に計算します。専有面積約70平方メートルに対し、敷地利用権の面積は14平方メートル。敷地利用権の割合が小さく、マイナスの係数をかけて引き算できる値は小さくなります。その結果、乖離率が大きくなり、従来の評価額との差額が広がります。
■マンションの相続税評価額の上昇は低層物件にも影響がある!
東京都内の築14年・5階建てマンションの2階でも、評価額は従来の3割増で、2000万円程度増えるといったデータがありました。専有面積に対する敷地利用権の割合は高層マンションより高いものの、乖離率は2倍超となりました。新ルールは、マンションを保有する人に幅広く影響が出るようです。
評価額が高くなると相続税額も増え、法定相続人は子が1人で、相続財産がマンションだけの場合、前者では従来の相続税額は約55万円となります。しかし今後は約750万円と14倍に増える計算となります。相続税は基礎控除後の課税対象額が大きいほど税率が高まる累進課税となり、今後は相続税額が想定を大きく超えそうで困る人が増える事が想定されます。
個人が取れる対策として、まずは不動産の評価額を試算し、どのくらい相続税が課される可能性があるかを知っておくのが肝心となります。土地の評価額を減らせる仕組みの一つに「小規模宅地等の特例」があり、被相続人の自宅を相続する際、土地(居住用宅地)の評価額を80%減らせます。特に立地条件の良いマンションでは、土地の評価額が減る効果は大きくなります。しかし適用には、相続人の持ち家や居住の状況などに一定の条件があるため、早めに条件を把握する必要があります。
今後の参考にお役立て下さい。
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